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崖の上のポニョと夢の力

僕の知り合いで、「人の夢の話を聞かされるほど、退屈なことはない」という人がいる。
なぜなら、「夢には一貫した理屈や、順を追った展開がなく、見た当人にとってはやたらリアルだが、話を聞かされている人間には脈絡がなくて単に意味不明」だからだそうである。

。。。確かにその通りですね。

しかし、僕はこうも思う。
ーはたして、そう簡単に切り捨ててしまっても良いものだろうか?

というのは、僕の見る限り、自分の夢、というか、夢としか言い様のないシロモノを人様にお見せして、しかも退屈どころか、大ヒットを飛ばしている作家が、日本に確実に2人いるからである。
しかも中途半端な人達ではない。
大物中の大物、そのジャンルにおけるトップである。

すなわち、アニメの宮崎駿さんであり、小説の村上春樹さんである。


このお2人の近作(「崖の上のポニョ」、「1Q84」)、映像も文章もひたすら描写は細密で精緻、リアルな手触りを持っているのに、ストーリーとしてみると奇妙に現実感がない、脈絡もあまりない。
とにかく説明の省略が多く、いきなり場面が飛んだりする。
当然、ついていけない人はついていけない。

。。。これってすごく夢っぽくないですか?


19〜20世紀の心理学者、フロイトによると、夢にはその人自身が気付かない、ふだん、表面上にはあらわれて来ないような、隠された欲望や恐怖、性衝動ーいわゆる潜在意識が隠されているという。
仮説にしても、そう考えると、なかなかエキサイティングである。

そう、夢にはその人の秘密が、隠されているのだ。
太宰治の項でも書いたけど、人は他人の秘密には興味津々である(夏目漱石の小説だって秘密がテーマだ)。
そう考えると、一概に夢だからといって退屈だと決めつけることは出来ない。

みんなそのことを薄々感じとっているからこそ、「ポニョ」を見に劇場に押し掛け、「1Q84」を読むため書店に殺到するのではないだろうか?


本格的に夢を書いている作家としては、色川武大先生がおられる。
この人はナルコレプシー(眠り病)という難病の患者さんで、その症状で正真正銘のリアルな幻覚を見るそうで、それを作品にそのまま書いたりしておられるのである。
もちろん、この人はしっかり夢も見る。
それもまた極めてリアルなやつ。
で、読者としては読んでいるうちにどこまでが夢で、どこからが現実で、はたまたどこからが幻覚なのかーだんだんごっちゃになって来て、分からなくなってきてしまう。
なんというか、色んな意味でスリリングですね。


こう書いてくると、夢というのは、作家にとって最後の鉱脈なのではないだろうか?
しかし危険な荒技であり、チンピラ作家がまねして命取りにならない保証はないーよなあ。

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